■ New 障害者グループホームの経営実態の把握について その3 ~新規事業展開への支援のために~
■ New 障害者グループホームの経営実態の把握について その2 ~新規事業展開への支援のために~
■ New 障害者グループホームの経営実態の把握について その1 ~新規事業展開への支援のために~
■ No.7 改正社会福祉法解説No.3 ~役員等の損害賠償責任等の明確化~
■ No.6 改正社会福祉法解説No.2 ~役員等の損害賠償責任等の明確化~
■ No.5 改正社会福祉法解説No.1 ~特別の利益供与禁止が新設された~
■ No.4 改正社会福祉法により、社会福祉法人会計基準が改正されました
■ No.3 改正社会福祉法により、社会福祉法人会計基準が改正されました
■ No.2 改正社会福祉法により、社会福祉法人会計基準が改正されました
■ No.1 改正社会福祉法により、社会福祉法人会計基準が改正されました
3、経営の良し悪しの判断基準
事業活動資金収支差額を、福祉活動収支差額と負担収支差額に分解します。
その上で、経営の良し悪しを考えてみます。
福祉活動収支差額 | 負担収支差額 | ||
ケース 1 | + | ゼロ | 健全経営 |
2 | + | - | |
3 | - | + | |
4 | - | - | ダメ経営 |
ケース2は、法人の考えとして、利用者負担を減らしてあげたいとの思いがあると理解できます。しかし本来は、負担収支差額はゼロに持って行くべきだと思います。
ケース3は、福祉サービスの利用者1割負担を超える負担を、利用者に求めていることになり、好ましくないと思います。
なお、所有物件で経営している場合は、家賃負担がありませんから、負担収支差額は当然プラスとなりますが、この場合は、減価償却費と比較し良し悪しの判定をする必要があります。
4、いろんな角度から分析値を検討
通常、経営分析は比率で比較検討します。
比率をとる分母としては、福祉活動収入になります。
例えば、人件費比率は、
人件費÷福祉活動収入(自立支援給付費収入)となります。
しかし、比率では金額の大小をみることが出来ません。
そこで例えば、利用者負担額の比較をする場合は、負担収入÷年間利用者数で、検討する必要があります。
また、職員人件費を比較する場合は、人件費÷常勤換算人数で検討する必要があります。
利用者数・職員常勤換算人数が分かれば、利用者一人当たり職員数が分かりますから、サービス提供時間を比較検討出来ます。
障害程度区分が高くなれば、当然サービス時間は増加します。
そのデータを、複数のホームで比較すれば、サービスに掛けている時間の妥当性が検証できます。
≪次回に続く≫
◇障害者グループホーム経営の経営判断に役立つ・根拠ある経営データについて、以下考えてみたいと思います。
(その1続き)
2、利用者の負担収支を切り離す必要があります。
下記のデータは、TKC-SBASTとして会計事務所向けに公表されている、グループホームの経営データ(26年度版)です。
単位:千円 | ||
事業活動収入 | 27,384 | ① |
人件費支出 | 15,137 | ② |
事業費支出 | 5,797 | |
内、給食費 | 2,243 | |
水道光熱費 | 1,429 | |
賃借料 | 748 | |
小計 | (4,420) | |
事務費支出 | 2,588 | |
その他の事業支出 | 139 | |
事業活動資金収支差額 | 3,721 | ③ |
このデータから人件費比率②÷①を計算すると、55.3%と極めて低い数値になります。
福祉サービス事業において、人件費比率は67%程度ありますから、55.3%という数値は異常といえます。
何故、人件費比率が低いのかと言えば、事業活動収入①の中に利用者からの負担収入や家賃補助が含まれているからです。
仮に、給食費・水道光熱費・賃借料の合計4,420千円が、利用者負担だったと仮定すると、障害福祉サービスの事業収入は22,964千円となります。
この場合、人件費比率は66%となりほぼ妥当な数値と考えられます。
また、収支差額率は16%となります。
障害者グループホーム経営の経営判断に役立つ・根拠ある経営データを把握するには、
利用者の負担収支を切り離す必要があるということです。
≪その3に続く≫
◇障害者の方々の生活の場として、グループホームはなくてはならないものとなってきています。
このようなニーズに応えるために、社会福祉法人が新規にグループホーム経営を始めるとき、様々な課題が出てきます。
社会福祉法改正があり、社会福祉法人は、長期ビジョンを持って効率的に経営することが求められています。
その場合、経営判断に役立つ・根拠のある経営データを把握しておく必要があります。
◇障害者グループホーム経営の経営判断に役立つ・根拠ある経営データについて、以下を考えてみたいと思います。
1、ホーム毎のデータが必要
複数のグループホームを経営している社会福祉法人が、それを拠点として、一括でデータを公表している場合、個別ホームの経営実態を把握することは不可能です。
従って、社会福祉法人にお願いし、個別ホームのデータを開示して貰う必要があります。
社会福祉法人の協力がないと、個別ホームのデータを入手することは出来ません。
≪その2に続く≫
1、法人に対する損害賠償責任(つづき)
◇ 罰則(刑事罰)の規定があります。
背任罪等の適用(130条の3①②)
役員・評議員が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は、法人に損害を与える目的で背任行為を行った罪(特別背任罪)が新設された。
収賄・贈賄罪(130条の3①②)
役員・評議員・会計監査人が、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受した罪(受託収賄罪)が、新設された。
その他(133条)・・・役員等、評議員
20万以下の過料(行政罰)が課される
2、第三者に対する責任
役員等又は評議員は、職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害の賠償責任を負う。
≪例≫
◇その者が、注意を怠らなかったことを証明したときは責任を免除。
◇当事者である役員等、及び評議員でない他の役員等、及び評議員も、当該損害賠償については連帯責任者となる。
29年度改正において、役員等の損害賠償責任等が新設されます。
(45条の20~22、130条の2~130条の5)
役員等とは
役員⇒ 理事及び監事(31条6項)
役員等⇒ 理事及び監事、並びに会計監査人(43条1項)
評議員等⇒ 評議員、理事及び監事、並びに会計監査人(38条)
1、法人に対する損害賠償責任
役員等及び評議員は、各々その任務を怠ったときは、法人に対し、これによって生じた損害の賠償責任を負う。但し、法人に対する責任については、責任の一部免除や責任限定契約も認められている。
◇ 任務を怠るとは? ≪これを、任務懈怠ニンムケタイと言います≫
①法令違反 | イ、社会福祉法、定款 ロ、一般法 |
②善管注意義務違反 | イ、業務執行上の義務違反 ロ、監視監督義務違反 (内部管理体制の構築・理事会報告) |
③忠実義務違反 (理事の場合) | 競合取引(自己又は第三者のため) 自己取引(無過失責任) 利益相反取引 |
但し、その者が注意を怠らなかったことを証明したときは、責任が免除される。
評議員には、業務執行権がなく、評議員会という会議体の構成員としての任務を行うものであるから、個々の評議員の任務懈怠により、法人に直接損害が発生するケースは少ないと考えられる。(厚労省事務連絡28年6月20日、第7章)
特別の利益供与禁止規定はこれまで定めがなかったが、改正法で新設された。
(28年度改正)
■ 法26条の2
事業を行うに当たり、その理事・監事・評議員・職員その他の政令で定める社会福祉法人の関係者(*1)に対し、特別の利益(*2)を与えてはならない。
*1:社会福祉法人の関係者(施行令13条の2)
① 社会福祉法人の設立者、理事、監事、評議員、又は職員
② ①に掲げる者の配偶者又は三親等内親族
③ ①②の内縁関係者
④ ②③の他、①の者から生計の支援を受ける者
⑤ 社会福祉法人の設立者が法人の場合、その法人が事業活動を支配する法人等
*2:特別の利益(法人税基本通達1-1-8)
次に掲げる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なもの。
① 理事長等に、社会福祉法人が所有する車両を無償で私的使用させる。
② 正当な理由なく、理事長が経営する会社へ資金を無償、低利で貸付けた。
③ 社会福祉法人の土地を、理事長等に無償又は有利な条件での譲渡。
④ 理事長等の土地を、高額賃料で借りる。
⑤ 社会福祉法人に特段の理由がないのに、理事長等から高金利で借入れた。
⑥ 正式な手続きを経ずに、理事長等が経営する会社を選定し、当該会社に有利な取引をした。
⑦ 取引業者の選定に際し、理事長が金品授受を受け便宜を図った。
⑧ 理事長の親族である職員に、給与規定に沿わない多額な給与を支払う。
29年度改正では、役員等の損害賠償責任が明確化され、背任罪や収賄・贈賄罪も適用 されることになる。
これらは、社会福祉法人の私物化を許さないための法制整備といえる。
ガバナンス強化・財務規律強化が求められる。
■ 経理規定の変更が必要
本年4月の改正社会福祉法により、社会福祉法人会計基準が改正されました。
これに伴い、経理規定の関連個所の変更が必要となります。
以下の内容をご確認ください。
なお、関連する会計基準省令等を事務所のHP(社福会計基準省令ページ)に掲載しております。
変更前 | 変更後 |
---|---|
社会福祉法人会計基準 | → 社会福祉法人会計基準(厚生労働省令 第七十九号) 略称、会計基準省令 |
会計基準注解 | → 局長通知、雇児発0331第15号 |
運用指針 | → 課長通知 雇児発0331第7号 |
財務諸表 | → 計算書類 計算書類とは、 貸借対照表及び収支計算書をいう。 収支計算書とは、資金収支計算書・事業活動計算書をいう。 社会福祉法人は、計算書類、その附属明細書及び財産目録を 作成しなければならない、とされた。 |
■ 計算書類の名称変更
収支計算書 ・・・ 法人単位資金収支計算書 (第一号第一様式)
資金収支内訳表 (第一号第二様式)
事業区分資金収支内訳表 (第一号第三様式)
拠点区分資金収支計算書 (第一号第四様式)
法人単位事業活動計算書 (第二号第一様式)
事業活動内訳表 (第二号第二様式)
事業区分事業活動内訳表 (第二号第三様式)
拠点区分事業活動計算書 (第二号第四様式)
貸借対照表 ・・・ 法人単位貸借対照表 (第三号第一様式)
貸借対照表内訳表 (第三号第二様式)
事業区分貸借対照表内訳表(第三号第三様式)
拠点区分貸借対照表 (第三号第四様式)
各第一様式の名称に「法人単位」が付きました。
また、番号が、漢数字となりました。
■ 作成書類の書類番号
法人全体での注記を、「別紙1」とし、第三号第一様式の後に記載する。
拠点区分での注記を、「別紙2」とし、第三号第四様式の後に記載する。
財産目録を、 「別紙4」。
■ 附属明細書の番号変更
法人全体で作成する附属明細書
別紙3(①) 借入金明細書
別紙3(②) 寄附金収益明細書
別紙3(③) 補助金事業等収益明細書
別紙3(④) 事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書
別紙3(⑤) 事業区分間及び拠点区分間貸付金(借入金)残高明細書
別紙3(⑥) 基本金明細書
別紙3(⑦) 国庫補助金等特別積立金明細書
拠点区分で作成する明細書
別紙3(⑧) 基本財産及びその他の固定資産明細書
別紙3(⑨) 引当金明細書
別紙3(⑩) 拠点区分資金収支明細書 ・・・これまでの別紙3
別紙3(⑪) 拠点区分事業活動明細書 ・・・これまでの別紙4
別紙3(⑫) 積立金・積立資産明細書
別紙3(⑬) サービス区分間繰入金明細書
別紙3(⑭) サービス区分間貸付金(借入金)残高明細書
別紙3(⑮) 就労支援事業別事業活動明細書
別紙3(⑮-2) 就労支援事業別事業活動明細書(多機能型事業所等用)
別紙3(⑯) 就労支援事業製造原価明細書
別紙3(⑯-2) 就労支援事業製造原価明細書(多機能型事業所等用)
別紙3(⑰) 就労支援事業販管費明細書
別紙3(⑰-2) 就労支援事業販管費明細書(多機能型事業所等用)
別紙3(⑱) 就労支援事業明細書
別紙3(⑱-2) 就労支援事業明細書(多機能型事業所等用)
別紙3(⑲) 授産事業費用明細書
会計帳簿は、書面又は電磁的記録をもって作成出来ることになった。
電磁的記録で保存する場合、モデル規定11条2項に追加。
計算書類の公表は、インターネットの利用により行うこととなった(法施行規則10条)。
施行日は、平成28年4月1日
■ 附属明細書は「別紙3」となりました。
局長通知25
法人全体で作成する附属明細書
別紙3(①) 借入金明細書
別紙3(②) 寄附金収益明細書
別紙3(③) 補助金事業等収益明細書
別紙3(④) 事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書
別紙3(⑤) 事業区分間及び拠点区分間貸付金(借入金)残高明細
別紙3(⑥) 基本金明細書
別紙3(⑦) 国庫補助金等特別積立金明細書
拠点区分で作成する明細書
別紙3(⑧) 基本財産及びその他の固定資産明細書
別紙3(⑨) 引当金明細書
別紙3(⑩) 拠点区分資金収支明細書 ・・・これまでの別紙3
別紙3(⑪) 拠点区分事業活動明細書 ・・・これまでの別紙4
別紙3(⑫) 積立金・積立資産明細書
別紙3(⑬) サービス区分間繰入金明細書
別紙3(⑭) サービス区分間貸付金(借入金)残高明細書
別紙3(⑮~⑲) 就労支援事業関係、授産事業関係明細書
■ 勘定科目は会計基準省令で定めることになった。
資金収支計算書勘定科目 会計基準省令 別表第一
事業活動計算書勘定科目 〃 別表第二
貸借対照表勘定科目 〃 別表第三
勘定科目説明書は課長通知 別添3。
■ 計算書類とは次を言います
収支計算書 ・・・ 法人単位資金収支計算書 (第一号第一様式)
資金収支内訳表 (第一号第二様式)
事業区分資金収支内訳表 (第一号第三様式)
拠点区分資金収支計算書 (第一号第四様式)
法人単位事業活動計算書 (第二号第一様式)
事業活動内訳表 (第二号第二様式)
事業区分事業活動内訳表 (第二号第三様式)
拠点区分事業活動計算書 (第二号第四様式)
貸借対照表 ・・・ 法人単位貸借対照表 (第三号第一様式)
貸借対照表内訳表 (第三号第二様式)
事業区分貸借対照表内訳表(第三号第三様式)
拠点区分貸借対照表 (第三号第四様式)
各第一様式の名称に「法人単位」が付きました。
また、番号が漢数字となりました。
■ 計算書類への注記局長
局長通知24
法人全体での注記 ・・・ 「別紙1」とし、第三号第一様式の後に記載する。
拠点区分での注記 ・・・ 「別紙2」とし、第三号第四様式の後に記載する。
これまで、別紙1は固定資産明細書、別紙2は引当金明細書でした。
■ 財産目録は「別紙4」となりました。
これまでは別紙5でした。局長通知26
■ 社会福祉法人会計基準が、会計基準省令に。
これまで、社会福祉法人会計基準は局長連名通知の別紙とされてきました。
しかし、改正社会福祉法第44条(会計)では厚生労働省令で定める基準とされ、
社会福祉法人会計基準は、厚生労働省令第七十九号となりました(以下、会計基準省令)。
会計基準省令は、平成28年4月1日から施行とされ、28年度決算より適用。
変更箇所を確認し、経理規定の変更が必要です。
なお、会計基準注解は「局長通知」、運用指針は「課長通知」となりました。
■ 財務諸表から計算書類へ呼称変更
これまでの社会福祉法人会計基準では・・・
資金収支計算書、事業活動計算書及び貸借対照表を財務諸表
と呼んでいましたが、会計基準省令では・・・
貸借対照表及び収支計算書を計算書類
ここで、収支計算書とは資金収支計算書・事業活動計算書となりました。
そして、社会福祉法人は計算書類、その附属明細書及び財産目録(「計算書類等」)を作成しなければならない、とされました(会計基準省令2条)。
■ 社会福祉法人は会計帳簿と計算書類等と作成しなければならない
とされ、会計帳簿は、書面又は電磁的記録をもって作成出来ることになりました(会計基準省令3条)。
会計帳簿をCDで保存出来ることになり、保存スペースの節約が期待出来ます。
社会福祉法人の内部留保の推移をみるため、以下のような社福モデルについて検討する。
社会福祉法人モデル
※クリックすると拡大表示します
当モデルの基本値
※クリックすると拡大表示します
返済額、償却額等の計算
※クリックすると拡大表示します
シミュレーション
初年 |
運転資金 | 25 | ||
---|---|---|---|
建物 | 100 | 借入 | 0 |
設備・備品 | 30 | 基本金 | 90 |
土地 | 30 | 国庫補助金 | 60 |
内部留保 | 91 | 繰越活動差額 | 126 |
資産合計 | 276 | 負債合計 | 276 |
で開始。
10年後 |
※クリックすると拡大表示します
15年後 |
※クリックすると拡大表示します
20年後 |
※クリックすると拡大表示します
30年後 |
※クリックすると拡大表示します
40年後 |
※クリックすると拡大表示します
社会福祉法人モデルの検討
当モデルにおいて40年間の内部留保額は、
(7.5×20年)+12×20年-(45+14)×2回=272 である。
※クリックすると拡大表示します
このように、当モデルでは、使途未定の資金が56生ずる。
法人は資金56の使途を検討し、事業拡大計画を明らかにする必要がある。
法人への応用
モデル法人の基本値に、検討法人の数値を入れると、検討法人の今後の内部留保額を予想出来る。
また、基本値に関し他の法人と比較検討出来る。
年回収率が 1 以下の法人は問題法人と考えられる。
- 新会計基準への移行期限 -
新会計基準への移行は、27年度予算から移行するのが最終期限です。
「27年度予算から移行」とはどういうことでしょうか?
これは、27年4月1日に移行すればよいという意味ではありません。予算を作るには、予算作成の作業が27年の2月、3月には必要となります。
その上で、予算承認の理事会が27年の3月中に開催されるのです。
ところで27年度予算は、拠点単位・法人全体で、しかも、新しい科目で作成する必要があります。
つまり、予算作成の作業に掛かる前に、拠点区分・サービス区分をどうするか、勘定科目をどうするかを決めなくてはなりません。
それが、経理規定の検討です。
新経理規定の施行日は、平成27年4月1日ですが、その検討は26年中に終えて、12月か1月の補正予算理事会で承認を得る必要があります。経理規定の検討には1~2か月は掛かるでしょうから、遅くとも今年11月には、検討を開始しなくてはなりません。
以上から新会計基準への移行準備開始は、今年11月がリミットだろうと考えられます。
移行手順をきちんと踏むことは法人ガバナンスの観点から当然のことですから、法人理事長・理事は、速やかに経理規定の検討に入られるようお願いします。
- 経理規定検討における留意点 -
・モデル経理規定の4条は財務諸表となっています。
ここでは、法人全体と各拠点で作成すべき財務諸表を、「第〇の△様式 ×××計算書」という風に書き出してください。
書き出したものが、決算時に作成する財務諸表となりますから、決算時のミスを防ぐためにも、キチンと書き出してください。
・1法人、1施設のところでは、各号の2様式、3様式は省略してください。
・第3号の1様式(貸借対照表)と第3号の4様式(拠点区分貸借対照表)には、それぞれ、15項目と12項目の注記が付きます。財務諸表には注記も入っていることにご注意ください。
・法人全体及び各拠点区分で作成する附属明細書も番号と名称を書き出してください。
「別紙3、〇〇拠点区分 資金収支明細書」は、保育所、措置施設で作成してください。
「別紙4、〇〇拠点区分 事業活動明細書」は、介護保険サービス及び障害福祉サービスを実施する拠点での作成となります。
・本部を拠点とするかどうかは法人の任意です。私は、1施設だけの法人にあっては、本部はサービス区分でいいと思います。実質的な本部機能を有する場合は、拠点区分とするのが妥当でしょう。
- 地域住民が必要とする社会福祉法人に変革することが重要 -
新聞報道によれば、8月27日から社会保障審議会の福祉部会で社会福祉法人(社福)の改革に向けた議論が始まったという。その議論では社福への課税強化案も議論されるという。
留保金を貯める込む社福・理事長に私物化された社福・利権がらみの社福等々・社福に対して良いイメージを持っていない国民からすれば、「課税強化」はスッキリした議論に見えるだろう。
しかし、65歳以上の高齢者人口が3,000万人を超える状態が、これから50年以上も続く社会を生きていく者として、社福が上手く機能してもらわないと困る、と思う。
私は、地域の高齢者福祉が、特養やデイサービス・また診療所などで一体的に運営され、高齢者が安心できるシステムになって欲しいと思っている。
その為には、社福のお金が地域福祉のために有効に・効率的に使われるべきだと思う。お金を上手く使うには、当然、社福の運営が住民に対しオープンにされ、その運営に住民の要望が反映されていくべきだろうと思う。
そう考えると、課税強化の議論は、課税さえすれば残りのお金は社福の自由にしてもいいでしょう、とも聞こえる。今議論すべきは、税収を上げる話ではなく、地域住民が必要とする社福に変革するためにはどうすべきか、ということではないだろうか。
社福の運営の公開は始まったばかりである。理事長・理事・監事は誰で、理事会はいつ開かれどんな議論がされたのか、また、積立資産は何に使う予定なのかといった情報が記載された「現況報告書」が、社福のホームページに公開するよう義務づけられたのは、今年の4月からである。財務諸表のネット公開義務付も同様である。
これから、公開された情報に対し、住民が疑問や要望をぶつけていくべきだと思う。
社福が地域で果たすべき役割は高齢者福祉だけに止まらない。少子化対策に欠かせない保育所、障害者が地域で生きていくために必要な障害者福祉サービス事業所や、児童虐待・DVから児童、女性を保護する措置施設など。これから、ますます複雑化する社会で欠かせない役割が社福に求められている。
社会福祉法人には、地域住民が必要とするものに変わっていって欲しいと思う。
そのためには、住民は、公開情報をしっかり見ていかねばならない。
- 社福は財務の透明化に努め、国民への説明責任を果すべき -
税制上の優遇措置を受け、税金が入っている社会福祉法人が、法人運営・財務の透明性確保に積極的に努めるのは当然であろうと思います。
しかし、現状は、ほど遠いものがあるように感じます。
一例として、新会計基準への取り組の鈍さがあげられます。
社会福祉法人の会計には、元々、複数の会計基準が存在し計算書類は分かり難いものでした。これを、全ての法人に単一の基準を適用することにより、透明性を高めようということで、平成24年度から新基準が施行されました。新基準への移行には4年の猶予が与えられていました。(当初、移行猶予期間は2年でしたが様々な抵抗を受け4年になった。)
ところが、2年を経過した25年度決算時点で、3割しか移行していないのではないかと言われています。
実際何割が移行したのか私には分かりませんが、私の事務所で実施した新会計基準移行セミナーで、新基準への移行時期をアンケートで回答してもらったところ、26年度、27年度に移行するとか、移行時期不明という法人が多かったのは事実です。
私は、アンケートを見ながら、"社福のヤル気"に疑問を感じました。
また、財務の透明性確保のため、平成25年5月、厚生労働省が全国の社会福祉法人に、24年度の財務諸表をホームページや広報誌で公表するよう要請したのですが、25年7月時点で公表した法人は全体の52.4%であったということです。(社福の在り方等に関する検討会、H26/6/16)
このため、厚労省は26年4月から、財務諸表の公開を義務づけるとした通知を出しました。
(「社会福祉法人の認可について」の一部改正について H26/5/29)
公開の「要請」では埒が明かないから、「義務」にする。
なんとも情けない話です。
様々な優遇措置を受けている社会福祉法人は、国民目線にしっかりと向き合うべきではないでしょうか。このことは、社会福祉法人の存在意義にもかかわる重要なテーマです。
社福が、その利害関係者である国民、地域住民に、財務内容を明らかにするということは当然のことです。法人の財務情報は、地域住民が利用したい施設を選択するときの判断材料となります。また、情報の公開は、法人間の業務提携などを促す要因になると思います。
財務内容の説明責任は、更に重要です。何をどう説明するかは、法人経営者の能力に関わる問題です。当期の資金差額はなぜこんなに残ったのか? だぶついている当期末残高はどう使うのか? また逆に、なぜ赤字になったのか? 赤字の改善見通しは?・・・
当然、説明のつかないお金を貯め込んでいる法人には、国民の批判が集中するでしょう。
財務の透明化と説明責任は、法人運営の透明化、ガバナンスの改善を促進するものと思います。このことは、法人の体質を強化し、より豊かな福祉サービスを国民が享受できる社会につながるものと信じます。
- 社福は自らを正す姿勢を示すべき -
最近、社会福祉法人の不正に関する新聞記事をよく見かけます。
大阪の吹田市の保育所では、前園長の飲食代や前理事長の自宅光熱費など、私的な出費2億1000万の不正支出があったということです。大阪府は、2006年の監査で、一部の不正に気付きながら是正させず、事実上放置し不正流用の拡大につながったとされています。府の担当者は「担当する法人数が多く、限られた職員で毎年監査するのは難しかった。指導・監査体制が不十分だった」と話しているそうです
(「毎日」、2014/8/9)。
また、全国41自治体で、2009年~13年度の間、計65法人において、役員による私的流用や理事会決定を経ない高額役員報酬の支払いがあったということです。
埼玉県の社福では、寄付金約1億7000万円が使途不明になり、理事長が一部を私的に流用。横浜市の社福では、元理事長が06~08年頃、最大で月225万円の報酬を受け取り、業務をしていない妻や長男にも月20万~100万円の給料が支払われ、流用総額は2億2500万円だったということです。同市は理事会が機能していないと指摘しているそうです。
(「読売」2014/8/14)
社会福祉法人の事業には、保育所、特養、障害者施設の他、児童養護施設のような措置施設がありますが、どの事業であっても、事業収入には税金が含まれています。また、施設整備の資金にも税金が入っています。
従って、社会福祉法人の事業収入を、法人外に費用支出したり、貸付けたり、高額役員報酬(実質的に利益配当)支出したりすることは、禁じられています。それを担保するため、行政による指導監督制度が設けられています。
社会福祉法人の色々な不祥事、批判を受けて、今、政府において、社会福祉法人の在り方が問い直されています。その議論の中から、社会福祉法人の法人運営の透明性を確保すべきだ、法人ガバナンスを十分に確保できる体制に変えるべきだ、という結論が出てきています。
(2014/6/16 「社福の在り方等に関する検討会」)
社会福祉法人は、法人運営、財務状況を適正化・透明化すべく、自ら、改革に真剣に取り組み、その経営基盤を強固なものにしていく必要があります。
なぜなら、65歳以上の高齢者人口が3000万人を超える時期が、今後50年以上も続くからです。だから、社会のセーフティネットとして、社会福祉法人の役割は本当に重要なのです。
また、障害児者の地域生活を支援する制度として、子育てを支援する制度として、児童虐待やDVから子ども女性を守る制度として、社会福祉法人の役割はますます重要となっていくからです。